銀幕の雫:  ● ラムのお話その八「海賊シリーズ2」

2009年1月13日火曜日

 ● ラムのお話その八「海賊シリーズ2」

前回の「海賊シリーズ1」でふと疑問に思った
17世紀頃に安いラム粗悪なラムは存在したか?

今回はこのテーマに沿ってちょっと考察したいと思います。

そもそもラムができたのは1500年代から1600年初頭と
いわれています。
諸説ありますが、プエルトリコに渡ったスペイン人探検隊
に蒸留技術を持つ隊員がいたというものと、
バルバドスに渡ったイギリス人が最初という二つが主です。

どちらにしても17世紀前半にラムは生まれました。
この頃はすでに大航海時代で、ヨーロッパでは
エリザベス1世が率いるイングランドが
スペインに変わり大英帝国を築いていました。

ということは、海賊も続々と生まれている時代です。
生産され始めたばかりのラムは砂糖生産業の副産物として生まれ、
労働者の日々の疲れを癒すためだったり、
三角貿易の商品として活躍?していた時期でしょう。
そもそも「高級品」というカテゴリー自体
なかったのではないでしょうか。

もう1つ、別の視点から。
では、当時ウイスキーはどうなっていたのかというと、
少し前に書いた「簡易アルコール史」を見ていただくと
分かると思うのですが、
1644年になってやっとスコットランドで密造酒時代に突入した
ばかり。当然それまでは穀物を蒸留しっぱなしの
ホワイトリカーを飲んでいたものと思われます。

このことから、17世紀当時「高級な蒸留酒」というのは
唯一ヨーロッパで飲まれるようになっていた
ブランデー(果実原料の蒸留酒)くらいしかなかったのでは
ないでしょうか。

では、貴族と呼ばれる人たちは何を飲んでいたのか。

日本ソムリエ教会の教本によると、
16~18世紀はヨーロッパの宮廷文化が最も花開いた時代であり、
宮廷の食事には、豪華な料理に合う質の高いワインが求められる
用になった。ブドウ畑を所有する王侯、貴族や僧院では、
ワイン造りに対する投資にますます拍車がかかり、
醸造技術にも格段の進歩が見られた。
17世紀末から18世紀にかけて、現在のようにワインを
瓶に詰め、コルクで栓をするというスタイルが考えられるようになり、
このことが、ワインの瓶内熟成による品質の向上、
美味しさの工場、保存、運搬、普及などに計り知れない
大きな影響を与えていった。

とあることから、やはり「高級酒」というのは
ワインとブランデーだったのでしょう。

以上のことから、ウイスキーなども当時は非常に
安価なお酒であったと思うのですが、
海賊にとってはいつでも飲める安いお酒は
ラムだけだったのでしょう。
ラムに荒っぽいイメージや海賊的な粗悪なお酒の
イメージはこういうところから派生して付いたものと考えます。

まぁでも、そのおかげで「海の似合う酒」にも
なったことを考えると、歴史って本当に面白いですね。

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