銀幕の雫: 11月 2008

2008年11月29日土曜日

文字通り「手作り」!!

2008年、ラム愛好家たちの間で
突如とある噂が流れました。
雨水を使ったラムがあるらしい…。

そんな噂の中心地となったのは、
カリブ海にあるマリーガラント島。
珊瑚礁の小さな島で別名「風車の島」と
呼ばれるように周囲60キロほどの島に80個もの風車が
あったようです。

いまだ、朝方に刈り取ったサトウキビを運ぶのは
水牛に運ばせた荷台を使い、
(ちなみにバルバドスにあるマウントゲイの大工場には
昔の資料としてその水牛車の展示用の像があるようです)
ラムの仕込み水には雨水を使い(島はいつも水不足なため)、
ホワイトラムは伝統的に59度と決まっています。
この度数の理由は、1956年に
瓶詰めされたラムは度数が高くなると酒税も高くなる
という法律ができ他の島は度数を下げたが、
この島では元々瓶詰めをしないで直接容器に移して売っていたため
課税の対象にならなかったとか。
なんとも時間の止まっているような美しい島です。

フランス語で「Pere」は神父・父という意味。
「ラバ神父」という名のラム、ペールラバ
2007年まで単式蒸留器を使ったり、
設備の近代化をしていなかったり、
加水後、おじさんが手でぐるぐるかき回してたりと、
19世紀のような製法を守り生産されていたようです。


その丁寧に(?)作られたラムの味を
ラムという枠ではなくホワイトの蒸留酒として圧倒的に美味い
と評したのは某カリスマ酒屋さん。
ちなみに酒飲みたちの間で絶大な人気を誇る漫画
古谷三敏さんの「BAR レモンハート」でも
少し前の回であのマスターが知らないお酒として
紹介されていました。

しかし残念なことに、
今年の3月にフランス人銀行家により買収され、
現在は蒸留をせずに施設の改築や設備の入れ替えが
行われています。

脅威の勢いでラム界を騒がせたラムは
もう生産されることはないでしょう。
来年以降蒸留される新しいペール・ラバも楽しみにしつつも、
やはり美味しいお酒がなくなっていくのは寂しいものです。

歴史と伝統がなくなっていくのは残念ですが、
現在の在庫で最後だと思われるので
ストックしておきたい方はお早めに!!

↓↓ 1000mlはコチラ ↓↓
ペールラバ

2008年11月28日金曜日

インカとスペインとサトウキビと

ペルーにおいてのサトウキビ栽培は
インカ帝国の時代からの歴史を持つとの肩書きで
入荷したこのラム。
あれ?サトウキビはコロンブスが南米に運んだのでは?
と、少し疑問に思ったので調べてみました。

が、自分の無知が証明されただけの
とても簡単な答えでした。
インカ帝国は1438年頃からスペイン人に滅ぼされる
1533年まで存在していました。
コロンブスがサトウキビを運んだのは1493年。
30年もあれば紆余曲折はあるでしょうが、
インカ帝国末期にはサトウキビは栽培されていたのでしょうね。

その後スペイン領になったペルーなので
ラムを熟成させるためにシェリーのソレラシステムを
使うというのは納得です。
ソレラシステムについては後日触れたいと思います。

そんな環境のもと作られる
ミロナリオ ソレラ 15年
ボトルが藁のようなものに包まれています。
この藁のようなものは和名パナマソウと呼ばれる
コロンビア原産の椰子のような葉をつける植物です。


パナマソウの名前の由来はパナマ帽を作る
原料になるということから付いた名前らしいです。
ちなみにラテン語名は「Cyclanthaceae」。
無理やり読むとおかしなことになりそうなので、
恥ずかしいからアルファベットにてのご紹介です。

もしご興味ある方は新宿御苑の温室に実物があるので、
ご覧になって見てください。
相変わらずお酒とはほとんど関係ない話で恐縮ですが。

ともあれ、一見なにかのモノマネ商品のような
見た目で疑いたくなるラムですが、味は本物。
それは「International Rum Festival 2008」において
Best of category and Gold Medalを受賞したことで証明されました。

カカオ、バニラのようなゆったりとした甘みと
滑らかな口当たりなので、
優しい甘口のラムがお好みの方に特にお勧めです。

今回もずいぶん話が飛んでしまいました。
次はちゃんとお酒の話をたくさん書けるように
努力したいと思います。

2008年11月26日水曜日

綺麗な水の島と王立修道院

お酒というのはその国の文化や歴史に
大きく関わっていたり、影響を受けたりしているため
何かのボトルを説明したり、調べたりしようとすると
次々に横道に逸れてしまいます。
しかし、それを知るのと知らないのとでは、
ひとつのお酒を飲むにあたって、
その味わいや思い入れが
全く変わってくるものではないでしょうか。
それがハードリカーの魅力のひとつだと思っています。
皆さんにも思い出のお酒ってありませんか??

前置きが長くなりましたが、
実を言うと、今回はお酒の話よりも
歴史や土地の話が多くなってしまったことへの
言い訳でした。

カリブ海のほぼ真ん中にあるグアドループ島。
近年のマルティニークブームにあるラム界ですが、
その中で新たなフランス系として
注目を集めている島です。

グアドループ島は1493年コロンブスが
最初のヨーロッパ人として上陸し、その際
スペインのエストレマドゥーラにある
サンタ・マリア・デ・グアドルーペ王立修道院
ちなんで命名しました。

この修道院、4世紀以上に渡ってスペインにおいて
最も重要な修道院とされていた修道院で、
その歴史は13世紀後半、羊飼いヒル・コルデロが
グアドルーペ河岸で聖母像を発見し、
その場所に礼拝堂が建てられたのが始まりです。

1340年、カスティーリャ王アルフォンソ11世が
聖母像を参拝した直後にイスラム軍を破ったことから、
教会を壮大な修道院に改修。
スペインにおける聖母信仰の中心となり、
そして1492年のレコンキスタにより
スペインの守護聖母を奉る巡礼地として
絶対的な存在になりました。
コロンブスは南米から連れてきた人々を
この修道院でカトリックに改宗させたといいます。
そのため、全スペイン語圏の守護聖母となっています。
王家の庇護を受けてきた修道院は
1993年に世界文化遺産登録されました。

そんな大事な修道院ですから、
コロンブスが危険な航海を続けた末
無事アメリカ大陸を発見したときに
言葉にならない感謝を込めて命名したのでしょう。

大航海時代の始まりを象徴するかのような
とっても素敵な話です。
しかし、この島にももちろん先住民はいました。
そして彼らにとっては迷惑この上ない話だったことでしょう。
この島は先住民たちには
Karukera(カルケラ=水の綺麗な島)
と呼ばれていました。
上から見ると蝶が羽を広げているようなこの島は
左の島バステールと右の島グランテールに分かれています。
バステールは起伏の激しい土地で、中央部には
熱帯ジャングルが広がっていることから
水が綺麗な土地になっているのではないかと
勝手に憶測しています。
そして、水が綺麗ということは海に囲まれた
小さな島にとっては、とても大切なことだったはずです。

長々とそんな話を書いてしまったのは
今回ご紹介しようと思ったラムの名前が原因です。
ロンジュトー蒸留所でセカンド・ブランドとして生産されている。
カルケラ
もちろん名前の通り、グアドループ産です。


主にロシアなどに向けての輸出用として作られていました。
vieux(ヴュー)はあまりフィルター処理をされていないのか
澱の浮遊が多く、その分とても長い余韻が楽しめます。


19951997のヴィンテージは
上品な滑らかさと甘さ、少し青みのあるフルーツのような香り。
とても綺麗な印象のラムです。


今回はお酒のお話は申し訳程度になってしまいましたが、
歴史やその土地に思いを馳せながら飲むのも
ハードリカーの楽しいところのひとつでしょうね。

2008年11月24日月曜日

洞窟内ナチュラル・エイジング

インダストリア・リコレラ・デ・クェザルテカ社は
中米グアテマラで1939年に創業。
カカオバニラの風味が強く
ややさっぱりとした甘みで飲みやすいラムを多く作ります。

今回のご紹介は同社の作るマルテコ 15年シリーズ。

黒字のラベルに色とりどりに描かれた鳥は
グアテマラの国鳥ケツァール(Quetzal)と思われ、
自由の象徴として大切にされている鳥です。

ちなみに通貨単位までケツァール(Quetzal)というのは
この赤や緑の色鮮やかな鳥がよっぽど好きなんでしょう。

和名は「カザリキヌハネドリ」
手塚治さんの有名な「火の鳥」のモデルになったそうです。

鳥の話ばかりではなくラムの話ですよね。

このマルテコシリーズは他の元スペイン領の国々とは違い、
モラセスからではなくサトウキビジュースを原料に製造。
連続式蒸留器にて蒸留後、オーク樽にて熟成されます。

その際、標高2500メートルまで樽を運ぶのですが、
これは大体富士山の5合目ほどの標高。
日本では森林限界といわれている高さです。
この高地にある天然の洞窟の中で自然に任せ
ゆっくりと熟成させることで
ラムにスパイスや樽の木の香りが追加されます。

シリーズ全体として、コーヒーやカカオ
それに蜂蜜のニュアンスが少々感じられます。

マルテコ 20年はシリーズ中最も甘口で
糖蜜やコーヒーの風味に少しのバニラを連想し、
どこか同じグアテマラ産のロンサカパを思い出させます。

湿度や温度が安定した高地の洞窟で熟成するから
一年を通じて平均気温20度前後のグアテマラでも
長期熟成が可能なんでしょうね。

マルテコ 10年 40.5度 700ml

2008年11月23日日曜日

ラムのお話 その弐

前回はラムの地域別分類のお話を書きましたが、
今回はその中から、
成城石井が輸入しているキューバのラムを中心に、
スペイン系ラム「RON」のお話。


その昔、
キューバでは「バカルディ」や「ロン・サカパ」が造られていました。

「バカルディ」は製造の拠点をキューバ国内に求め、
ライセンスごとキューバから離れ、
プエルトリコに拠点を移してしまっています。

「ロン・サカパ」はグァテマラへ拠点を移し、
昔のレシピを使用しつつ生産を続けていますが、
その味わいは、やはりキューバ時代の味わいと比べ、
グァテマラならではの味わいに、
変化してきているように感じると言われています。

これらの銘柄を造っていた蒸留所は、
「クーバ・ロン」と言う蒸留所で、
今でもレシピは残っていると言われていますが、
使用されておらず、全く新しい銘柄の、
サンチアゴ・デ・クーバを生産していて、
キューバの中でも最大規模の蒸留所の一つとなっています。


キューバのラムの製造方法で特徴的な方法が2つあります。

一つは、
サトウキビを絞り、出来たサトウキビジュースから、
糖蜜のみを使用します。

簡単に言うと、純粋に砂糖になる成分を取り除き、
残った液体でラムが造られます。

もう一つは、
連続式蒸留機で4回蒸留するものを「RON」と呼び、
1回だけ蒸留するものを「アグアールディエンテ」と呼び、
それぞれ酒税の管理方法が違います。

「RON」は樽やステンレスのタンクに入れられて、
アグアールディエンテとミネラル分を除いた水を加え、
熟成されます。

キューバラムは全部ブレンド?!
と、言わないでくださいね。

各蒸留所にはマスターブレンダーがいて、
毎年のボトリングの際に彼らの腕が振るわれ、
同品質のラムがボトリングされています。

キューバは社会主義の国ですので、
ラムも少し変わった管理のされ方があり、
国が「ハバナクラブ」を管理し、
Cuba Ron SAが「サンチアゴ・デ・クーバ」と「クバイ」、
Tecnoazucarが「ムラータ」と「サンテロ」、
EBRが「レジェンダリオ」(スペイン向け限定になった為、
バリアイ」として別の名前で生産しています)と「アレーチャ」、
CIMEXが「ヴァラデロ」と「カネイ」、
と、それぞれの商が2銘柄ずつ管理しています。

味わいの特徴も良く出ていますので、
お客様の好みも分かれているです。


アグアールディエンテは今まで、
キューバ以外では飲まれることも少なかったようですが、
ドライな味わいと切れのよさから、
すっかり定番アイテムとして定着してきました。

サオカン」を一昨年から輸入していますが、
今年より「サンテロ」「ムラータ」「バリアイ」などの、
アグアールディエンテの輸入を開始し、
好評を得ています。

キューバを代表するカクテル「モヒート」があります。

本場キューバでは、高価なラムを使わずに、
安価なアグアールディエンテも使われていて、
出来上がるカクテルはモヒートと呼ばず、
「ドラケ」と呼ばれます。

モヒートの造り方は全く同じレシピですけどね。

これからは、
「モヒート」や「ドラケ」を作る際はぜひ、
本物のキューバラムで!

2008年11月21日金曜日

CUBAと言えばコレでしょ

キューバを代表する物として、
葉巻、ラム、音楽。

カストロチェ・ゲバラと音楽とサルサ、
熱い、陽気。。。
えーっと他にもたくさんありますが、
実はコーヒーもキューバの特産品です。

成城石井で輸入しているキューバのラムが、
ハバナクラブ以外の銘柄で、
全部で34銘柄もあります。

サンティアゴ・デ・クーバロン クバイ
ロン・アレーチャバリアイ
サンテロロン・ムラータ、ビヒア、
キューバンタイムにタイミングが合わず、
品切れしてしまったアイテムもありますが、
次回は来年のバレンタインデー前には入荷の予定です。

その際には待望の!
あのリキュールも入荷します!!
あの、たばこの葉っぱの種が入ったアレです。

価格はそれほど高くならない予定ですが、
入荷をお楽しみに!

で、話を元に戻して、
キューバ産のコーヒーの話。

その名はクビータ。

どこかで聞いたことあります?!
なかなか売っていなくて、
入手は未だ困難ですが、
深いコクと酸味があって、
エスプレッソにするともう最高!

そんなコーヒーをリキュールにした、
クビータ コーヒーリキュールがあります。



定番のコーヒーリキュールと比べると、
とろりとした液体の中に、
酸味と甘みが混在していますが、
ケミカルな味わいや香りが一切感じられません。

と言うか、キューバでわざわざケミカルにする必要も無く、
天然資源のみで造られています。

アイスクリームにかけるもよし、
牛乳と割って飲むと至福の幸せw
サンチアゴ・デ・クーバと同じ所で造られていて、
ボトリングはクバイの工場で行われています。

この冬のホットカクテルは、
ぜひクビータ コーヒーリキュールで!

2008年11月20日木曜日

火山が生んだリゾート

アフリカ大陸の東側、
インド洋に浮かぶ小さな島、レユニオン島
フランス人にはおなじみの火山と美しい海岸線が有名なリゾート地です。


この島は現在でもフランス領になっていて
バニラの産地としても有名だそうです。
その孤島で創業1870年と歴史のあるサバンナ蒸留所

そこで作られたラムが
日本に最初に入荷したのはキャップサヴァンナ 3年だったはず。

熟成に使用する樽にはリムーザン産オークと
アリエ産オーク樽が使われているそうです。

3年がリリースされた当時、
「フレッシュで若々しい味わいで美味しいけど、
もう少し熟成したものも飲んでみたい。7年熟成とかないかな。」

なんて話をしていたら、なんと4年後にキャップ サヴァンナ 7年 43度 700mlがリリース。
大喜びをしながら飲んだ記憶があります。


そのキャプサバンナを
「ラムのラフロイグ版?」
と「WHISKY Magazine Japan」にて称したのは
ウイスキー評論家のマーティン・ヌエ氏。

この歴史ある蒸留所は
フランス海外県ということでアグリコール製法のラムを作ったり
ブランデーの造り方を取り入れてラムを製造したり
それぞれホワイトと熟成物を同時にリリースするなど
様々な挑戦を繰り返して
飲み手側を常に楽しませてくれています。

今後のチャレンジに期待しつつ
楽しむのもいいのでは。

2008年11月19日水曜日

高貴な白と言う名のリキュール

エーデルワイスという花があります。
高貴な白と言う意味だそうで、
和名は「ウスユキソウ」と言うそうです。

映画「サウンド・オブ・ミュージック」で有名になりましたよね?!

成城石井で輸入しているリキュールで、
エーデル・アイス」と言うリキュールがあります。
375mlで7,784円は高いです。
が、うんちくを語りだすと、
かなぁーり語れます。



特筆すべきポイントは、
このエーデル・アイスを、
生産地のスイスから紹介してくれた人物。

知る人ぞ知る、
知らない人もきっと知っている!
デビット・ゾペティさん。

その昔、
久米宏さんの「ニュース・ステーション」
という番組がありましたよね?!
特集がたまに放映されていましたが、
そのうちのいくつかをデビットさんが作っていました。

ラップランドのトナカイの話、
タヒチの核実験の話、
アリューシャン列島のアリューシャン戦争の話などなど、
声を聞いたりすると思い出す人もしばしば。

映画にもなった「いちげんさん
ご存じです?
これ、デビットさんの作家デビュー作で、
すばる文学賞を受賞。

ニュースステーションの僻地への旅の物語も、
旅日記」として本になっていて、
コレめちゃくちゃ面白いので、
ぜひ読んでみてください!

デビットさん、
パラグライダーもするんです。

詳しくは「命の風」って本で書かれていますが、
今年の夏の終わりに、
デビットさんのイベントが予定されていました。

そのネタ集めのために、故郷スイスへ帰り、
パラグライダーをして、
その素晴らしさを日本の人たちに広めると言ったイベントの予定でしたが、
なんと墜落してしまい、
ヘリコプターで運ばれて、
頚椎の7番目を骨折し、
奇跡の生還をしたはいいが、
しばらくはロボコップのような動きしかできない
コルセットを強要されてました。

と、デビットさんのネタばかり書いてしまいましたが、
スイスを代表する高山植物「エーデルワイス」の花を、
世界で初めて抽出し、
リキュールにしたのがこの「エーデル・アイス」です。

まろやかな、上品な、さっぱりとした甘さがあり、
冷たく冷やしてロックで飲むか、
泡盛と割って「エーデルアワー」って言う、
ちょっとベタな名前のカクテルがお勧めです。

お酒よりデビットさんのネタが長くなってしまいましたが、
またの機会がありましたら、
エーデル・アイスのお話を書きますね。

デビット・ゾペティの本はこちら